日替わり内室

新冠肺炎のせいで仕事が猛烈に忙しく(当社比50%アップ)、誰も観ないであろうインターネットの世界の片隅に弱音の1つでも吐いてやろうとLINEのタイムラインを開いた。少しスクロールしたところで思わず辞書を引いてしまうようなネットゲームの広告が現れた

本当に辞書を引いてしまったのだが、やはり「内室」には偉い人の妻という意味しかなかった。うーむ、古い言葉ではあるが、2020年の今まで「日替わり」と繋がったことはなかったであろう。往年のサンシャイン牧場機械翻訳感は強かったのだけれども、あれから十余年、機械翻訳も驚異の進歩を遂げたのは皆さんご存知の通り。それでも依然としてコロケーション(適切な言葉の選び方)は難しいという学術的課題の存在を日替わり内室によって実感するとは。
ここまでで既に、仕事が忙しかったことなんてどうでもよくなる程の衝撃なのだが、これは動画広告である。更に衝撃は続く。プレイヤーの操作キャラ(今風に言うとアバター?)の職業は囚われの「乞食」である。Lv.は0、いやそれはいい、乞食て。しかも何故か同じ牢屋にLv.79の「富豪の娘」も囚われている。Lv.0というのは無産階級という意味なのか? 壁のレンガを崩して掘ろうとする乞食。そうか、脱獄して一旗上げ、立身出世していくというストーリーなのかと思いきや、すぐに見張りの兵士に「何をしている!」(改行は「し」と「て」の間)と見つかってしまう。兵士が牢に入ってきて「逃げる」「認める」の2択を選ぶ画面になった次の瞬間、乞食がレンガで兵士を撲殺する! そうして経験値を得たのであろう乞食はLv.30になり、「三品の役人」にジョブチェンジするのだった。この後「この女を救いますか? はい いいえ」という情緒のないダイアログが出てくることで、あぁこういう風にハーレムを作っていくゲームなのかなと何となく想像は付くのだが、ここまでこの広告を見続けた人の興味は、三品という形容詞を選ぶセンスがゲームの中でも発揮されているかどうかにあることは言うまでもなかろう。もちろん期待は裏切らない。だってこのゲームは「日替わり内室」だものーーとばかりに美女に囲まれたゲームタイトルのロゴが出てきて広告は終わる。

広告の動画の下に書いてある「だれか〜!助けて〜!」は、一見すると動画の最初に出ている囚われの富豪の娘のセリフとも取れるが、動画終了後には見終えた者の脳の言語野も同じメッセージを発するだろう。狙ったわけではなかろうが、ダブルミーニングになっている。

何が起こるか分からない世界情勢が続いている。サンシャイン牧場がそうであったように、このゲームも意外なヒットを飛ばすかもしれない。今から始めておけば先行者利益を取れるかもしれない! 私はやらんが。